歯科医師のための口元ボトックス注入ガイド|ガミースマイル・梅干しじわ・口角下制筋の注入点と単位数

2026年10月23日 | 監修:Medixor編集部 | カテゴリ:ボツリヌストキシン(歯科)

ガミースマイルのボトックス、咬筋の次に始めてみたいけれど、どこに何単位打てばいいの?口元は少しのずれで笑顔が変わる部位だけに、最初の一歩をためらう歯科医師の方も多いはずです。

こんな方におすすめ
・咬筋ボトックスを行っていて、口元の施術にも広げたい歯科医師
・矯正や補綴の患者さんから、ガミースマイルや口元の悩みを相談される方
・口元ボトックスの注入点と単位数の目安を整理しておきたい方

この記事で解決できる悩み
・ガミースマイル・梅干しじわ・口角の下がりに対する注入点がわかる
・文献で報告されている単位数の目安がわかる
・歯科治療とのタイミングや、患者説明のポイントがわかる

結論から言うと、口元ボトックスのコツは「少量・正確な位置・2週間後の評価」の3つです。歯科医師は口腔周囲の解剖と咬合に詳しいぶん、適応の見極めで強みを発揮できます。

1. 歯科医師が口元ボトックスを始める意義|咬筋の次に提案しやすい理由

1-1. 歯科診療と口元の悩みの接点

矯正治療や前歯部の補綴が終わったあと、「歯はきれいになったのに、笑うと歯ぐきが目立つ」「口元のしわが気になる」と相談されることがあります。歯科医師は口元を日常的に観察しているため、こうした悩みに気づきやすい立場にあります。

1-2. 口元ボトックスで対応できる3つの悩み

悩み 主な対象筋 この記事の章
ガミースマイル 上唇鼻翼挙筋などの上唇挙筋群 3章
梅干しじわ(顎のしわ) オトガイ筋 4章
への字口・口角の下がり 口角下制筋 5章

1-3. 施術前に押さえておきたい前提

歯科医師がボツリヌストキシンを扱える範囲は、口腔・顎顔面領域に関わる治療とする考え方が一般的ですが、解釈には議論もあります。詳しくは歯科医師が扱える美容医療の範囲と法的根拠まとめで整理しています。また、美容目的で使われる製剤の多くは国内未承認薬です。

2. 口元ボトックスの解剖|押さえておきたい口周りの筋肉

2-1. 上唇挙筋群(上唇鼻翼挙筋・上唇挙筋・小頬骨筋)

上唇を引き上げる筋群で、ガミースマイルの主な原因になります。3つの筋は鼻翼の外側で近接しており、この交わる部分が注入のターゲットになります。

2-2. オトガイ筋

下唇を押し上げ、顎の皮膚にしわを寄せる筋です。過剰に緊張すると、顎に梅干しのような凹凸が出ます。

2-3. 口角下制筋と下唇下制筋

口角下制筋は口角を下に引く筋で、その内側の深部に下唇を下げる下唇下制筋があります。口角下制筋を狙った薬剤が下唇下制筋に及ぶと、笑顔の左右差の原因になります。

2-4. 口輪筋|拡散の影響を受けやすい筋

口を閉じる働きを担う筋で、すべての口元施術の近くにあります。口輪筋に薬剤が広がると、飲み物がこぼれる、発音しにくいといった症状が出ることがあります。口元の施術では、口輪筋に広げないことを常に意識しましょう。

3. ガミースマイルのボトックス|タイプ別の注入点と単位数

3-1. ガミースマイルのタイプ分類

笑ったときに歯肉がおおむね3mm以上見える状態をガミースマイルと呼ぶことが多く、歯肉が見える部位によって、前歯部型・臼歯部型・混合型に分ける考え方があります。タイプによって注入点が変わるので、正面からの笑顔写真で記録しておきましょう。

3-2. 歯科的な評価|ボトックスの適応を見極める

ここは歯科医師の腕の見せどころです。ガミースマイルの原因には、上顎の垂直的過成長(骨格性)、歯の萌出異常(歯性)、歯肉の過剰(歯肉性)、上唇の過剰な動き(筋性)などがあります。ボトックスが向いているのは、主に上唇の動きが大きい筋性のケースです。骨格性や歯肉性が主な原因なら、外科処置や歯周外科のほうが適していることもあります。安静時と笑顔時の上唇の位置差を測っておくと、説明に使えます。

3-3. 前歯部型の注入点

前歯部型では、上唇鼻翼挙筋・上唇挙筋・小頬骨筋が集まる点(Yonsei pointと呼ばれることがあります)に注入する方法が報告されています。目安は鼻翼の外側、鼻唇溝の上端付近です。臼歯部型では、笑ったときに最も収縮する頬骨筋の部位に少量を加える方法も報告されています。

3-4. 報告されている単位数の目安

前歯部型では片側2〜3単位前後、臼歯部型の頬骨筋では片側1〜2単位程度とする報告が多くみられます。入れすぎると上唇が伸びすぎて、笑顔が不自然になったり上唇が長く見えたりすることがあります。初回は少なめから始めましょう。
※単位数はオナボツリヌストキシンA換算で報告されている目安です。単位は製剤ごとに測定方法が異なり、製剤間で単純に換算できないとされています。

4. 梅干しじわ(オトガイ筋)のボトックス|注入点と単位数

4-1. オトガイ筋が過緊張になる背景

上顎前突や口唇の閉鎖不全がある患者さんでは、口を閉じるためにオトガイ筋が常に力んでいることがあります。矯正中や矯正後の患者さんで梅干しじわが目立つのは、このためです。咬合や口唇閉鎖の評価とあわせて診ることができるのは、歯科ならではの視点ですね。

4-2. 注入点:正中1点法と左右2点法

顎の最も突出した部分の正中に1点打つ方法と、正中から左右に5mm程度離して2点打つ方法が報告されています。いずれも、下唇に近い高い位置は避け、顎の下方に注入するのが基本です。高い位置に入れると口輪筋や下唇下制筋に及び、下唇の動きに影響が出ることがあります。

4-3. 単位数と注入深度の目安

総量で4〜10単位程度の報告が多く、骨膜上の深い層に注入する方法がよく紹介されています。
※単位数はオナボツリヌストキシンA換算で報告されている目安です。単位は製剤ごとに測定方法が異なり、製剤間で単純に換算できないとされています。

5. 口角下制筋のボトックス|への字口・口角の下がりへの注入点と単位数

5-1. 口角下制筋の位置を確認する方法

患者さんに口角を強く下げてもらう(「への字口」をつくってもらう)と、口角から下顎縁に向かう口角下制筋の走行を触れやすくなります。施術前にマーキングしておくと、注入点のずれを防げます。

5-2. 下唇下制筋を避ける注入点の取り方

一般的に推奨されているのは、鼻唇溝の延長線上で、下顎縁から1cm程度上の位置です。口角に近い位置や内側に寄りすぎると、下唇下制筋に薬剤が及びやすくなります。外側寄り・下顎縁寄り・浅めを意識しましょう。

5-3. 単位数の目安と、オトガイ筋との同時施術

片側2〜4単位程度の報告が多くみられます。口角の下がりと梅干しじわは同時にみられることが多いため、オトガイ筋と同日に施術するケースもあります。その場合は総量が増えるので、初回はそれぞれ少なめに設定し、2週間後に調整するほうが安全です。少量の施術が中心になるため、ボツリヌストキシン50単位の活用法もあわせて参考にしてください。
※単位数はオナボツリヌストキシンA換算で報告されている目安です。単位は製剤ごとに測定方法が異なり、製剤間で単純に換算できないとされています。

6. 口元ボトックスの注意点と患者説明|歯科医院ならではのポイント

6-1. 起こりやすい合併症

口元で注意したいのは、笑顔の不自然さ、口唇閉鎖不全、左右差です。多くは一時的とされていますが、会話や食事に関わるため患者さんの不安は大きくなりがちです。起きたときの対応はボトックスの合併症と対処法で解説しています。

6-2. 歯科治療・矯正とのタイミング調整

施術当日は注入部位を強く圧迫しないことが推奨されています。口唇を大きく牽引する歯科処置や印象採得は、施術より先に済ませるか、別の日に予定するとよいでしょう。矯正の資料採得(顔貌写真など)を行う場合も、ボトックスの効果が出る前に撮っておくと、治療効果の評価がしやすくなります。

6-3. 初回は少量で行い、2週間後に評価する

口元は、わずかな単位数の差で仕上がりが変わる部位です。初回は少なめに注入し、効果が出そろう2週間前後で写真と動きを確認してから追加を判断しましょう。施術ごとに製剤名・ロット・希釈量・注入点ごとの単位数を記録しておくと、次回の調整に役立ちます。

6-4. カウンセリングで伝えること

・効果は一時的で、持続期間は3〜4か月程度が目安とされていること
・笑顔の変化や飲み物のこぼれやすさなどが起こる可能性と、多くは一時的であること
・骨格性や歯肉性のガミースマイルでは、ボトックスの効果が限られること
・使用する薬剤が国内未承認薬であること、医薬品副作用被害救済制度の対象外であること

まとめ

1. 口元ボトックスの基本は「少量・正確な位置・2週間後の評価」
2. ガミースマイルは、まず骨格性・歯性・歯肉性・筋性の原因を見極める
3. オトガイ筋は顎の下方に、口角下制筋は外側・下顎縁寄りに注入する
4. 口輪筋と下唇下制筋への拡散を常に意識する
5. 歯科処置や矯正の資料採得とのタイミングを調整する

咬合と口元の両方を診られることは、歯科医師ならではの強みです。まずは適応を絞って、少量から始めてみてください。

注意事項・免責事項
本記事は医療従事者向けの情報提供を目的としており、一般の方への治療推奨ではありません。記載の薬剤には国内未承認のものが含まれます。薬剤の使用は必ず医師の診断と処方のもとで行ってください。
本記事に掲載した注入点・単位数は、国内外の文献や報告をもとに参考情報として整理したものであり、効果・安全性を保証するものではありません。効果には個人差があります。歯科医師の診療範囲については最新の法令・通知を確認し、最終的な判断は担当医師が行ってください。
薬機法の解釈・運用については、必要に応じて専門家にご相談ください。
監修
Medixor編集部
美容医療クリニック向け会員制プラットフォーム。国内外の美容薬剤情報・仕入れ実務・薬機法対応コンテンツを発信。
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